アルコール依存症ってどういうの?

 こんにちは、せなパパです。

今回は、私がたびたび話題に持ち出しているアルコール依存症について取り上げてみたいと思います。

アルコール依存症は、それ自体は精神病ではありませんが、アルコール性認知症などのいろんな精神病を引き起こす重大な要因となっています。

皆さんは、アルコール依存症というとどういうイメージをもっておられますか?

大の酒好き、大酒飲み、酒が強い、酒豪、だらしない、などでしょうか。

しかし、アルコール依存症という病気は、単にお酒が好きというだけではないようです。

もしかすると、好きでお酒を飲んでいるわけではないかもしれません。

ひどくなると、お酒を美味しいと感じなくても、嘔吐をくり返しながらでも、お酒をひっきりなしに飲んだりします。

つまり、お酒を飲みたいから飲んでいるわけではなく、お酒を飲まずにはいられないんです

よく言われるのが、「飲酒を自分でコントロールできなくなり、お酒が手段ではなく目的になってしまっている」ということです。

「なにもしないでお酒ばかり飲んでだらしない」と思われるかもしれませんが、「なにもしない」のではなくて「なにかをしたくても、お酒を飲まずにはいられないから、できない」(たとえば、体がきつくてお風呂にも入れなくなり、人との約束も守れなくなったりします)のかもしれないのです。

では、アルコールというものがどんなものなのかを少し考えてみましょう。

アルコールは嗜好品であるとともに、一種の薬物であるとも考えられます。

精神に影響を与える薬物は、大きく、アッパー(興奮)型とダウナー(抑制)型、幻覚型に分けられると思います。

アッパー型というのは、興奮系の薬物で、いわゆる「ハイ」な状態になるものです。

覚醒剤やコカイン、LSDなどがこれにあたります。

ダウナー型というのは、抑制系の薬物で、理性のコントロールがはずれてリラックスし、多幸感が得られ「酔った」状態になるものです。

催眠作用(眠くなる作用)をもつものが多いようです。

アルコールやシンナー、大麻マリファナ)、ヘロインなどがこれにあたります。

飲酒して酔って「ハイ」になる人もいますが、催眠作用があるということで、アルコールはアッパー型ではなくてダウナー型に分類されるんでしょうね。

幻覚型というのは、いわゆる幻視や幻聴をともなうもので、シンナーやLSDがこれに含まれるようです。

また、アルコール依存症でも「離脱症状(禁断症状)」として幻覚が現れることがあるようです(虫などの小動物が見えたりする幻視が有名です)。

それでは、アルコールに対する「依存」とは、どういうものかについて考えてみましょう。

依存には、大きく「精神依存」と「身体依存」があります。

アルコール依存症は、その両方を伴います。

精神依存とは、「それがないと不安」「それがないと物足りない」「それなしではいられない」といった欲求、それが強くなると渇望(デザイア)が生じる状態のことです。

アルコールをはじめ、覚醒剤大麻、ヘロイン、コカインなど大抵の薬物がこれを伴うようですね。

習慣的に飲酒(晩酌)をしている人は、すでにこの精神依存が形成されているのかもしれませんね(¯―¯٥)

それでは、身体依存を説明したいと思います。

アルコールをはじめ、ヘロインなどがこれを伴うようです。

まず、人の体には恒常性(ホメオスタシス)という機能が備わっています。

たとえば、通常であれば、個人差はありますが、人の体温は、寒い時でも暑い時でもほぼ36℃~37℃くらいに保たれていると思います。

このように、恒常性とは、どんな環境であれ、身体の状態を常に一定に保とうとすることです。

栄養が不足してきたらお腹が空いたり、水分が不足してきたら喉が渇いたり、疲れたから眠くなるのもそのためです。

体の内分泌系や神経系が作用しているんですね。

アルコールを常に摂取していると、その状態に体が慣れてしまい、その状態で恒常性が形成され、アルコールが体内にある状態を普通の状態として、その状態を一定に保とうと恒常性が働きます。

その結果、お腹が空いたり、喉が渇いたり、眠たくなるのと一緒で、体や脳がアルコールを欲してしまいます。

また、アルコールを摂取できないと恒常性が保てなくなり、内分泌系や神経系に異常が起こって、手が震え(振戦)たり、せん妄という状態になったり、幻覚が現れたりする「離脱症状(禁断症状)」が起こってしまうのです。

このように、お腹が空いたり喉が渇いたり、眠たくなったりするのと同じよう飲酒欲求が起きてしまうのです。

好きだから、美味しいから飲みたいというような意思の問題ではなくて、脳が欲するのです。

皆さんは、お腹が空いたり、喉が渇いたりするのと同じように起こる「飲酒欲求」を我慢できそうですか。

どれだけ辛く苦しいことか想像できそうですよね。

だから、「飲酒欲求」を我慢できるかどうかは、本人の意思の強さの問題ばかりではない(意思の強さは関係ない)というのは、そのためです。

そして、一度、体がアルコールを要求するそういった一連の回路が脳や神経に形成されてしまうと、それは元に戻せないのです。

それが、「アルコール依存症に回復はあっても治癒はない」と言われるゆえんです。

この飲酒欲求を断ち切るのは相当の努力が必要になると想像できますね。

お酒が最初飲めなくても、だんだんお酒が強くなって飲めるようになってくるということがありますよね。

それって、もしかしたら、体がアルコールに対する恒常性を形成し始めて、身体依存の形成の準備ができてきているということかもしれませんね。(¯―¯٥)

ところで、アルコール依存症になる原因はなんなんでしょうか?

私は、本人が意識するにしろしないにしろ、なんらかのストレスからお酒に逃げたことによるものだと思っています。(少し言葉は悪いですが‥‥‥(¯―¯٥))

アルコール依存症の人で、「お酒に逃げたつもりはない」と言っている人も、自分が意識していないだけで、実はそうなんじゃないかと思います。

たとえば、高校生の頃、受験勉強でストレスを抱えていて、大学に進学してからその開放感からお酒を飲むようになって、最初は友だちと一緒にお酒を飲んでいたのが、いつの間にか一人でもお酒を飲むようになって、気がつけばアルコール依存症になっていたという若いアルコール依存症の患者さんもいます。

酒浸しになって大学の授業に行けなくなり、結局、退学してしまいました。

そのアルコール依存症の患者さんは、自分がストレスを抱えていたことを意識してはいませんでした。

アルコール依存症の症状は進行すると「連続飲酒」といって、家に引きこもったりして、朝から晩まで飲酒して、眠って起きては、また飲酒することを繰り返すことになります。

お酒に酔いつぶれて寝てしまうのは、実は眠るのではなくて気絶しているのだという話もあります。

それと、お酒を飲みすぎて記憶がないという経験をしたことがある人も多いかもしれませんが、それを「ブラックアウト」と言います。

これをしょっちゅう繰り返すのは、ある意味、記憶障害と言えるかもしれませんね。

また、そうでなくても、お酒を飲んではいけない状況にも関わらず飲酒をしてしまうことも、その症状の一つです。

会社に出社する前にお酒を飲むとか、人と会う約束があるのにその前にお酒を飲むとか‥‥‥。

車を運転する予定があって、飲酒運転になることが分かっているにも関わらず飲酒してしまう人は、すでにアルコール依存症になってしまっていると言えるのかもしれませんね。

アルコール依存症における回復には「断酒」しかないと言われています。(節酒、ほどほどにお酒を飲むことはできないと言われています)

私は、その回復への最初の手段は入院することだと考えています。

今まで通りの生活をしながら断酒することはとても困難なことに思えます。

今まで通りの生活を送りながら「断酒」をすると、まず「離脱症状」が現れることでしょう。

これに対処しきれず、ついまた飲酒してしまうということがあると思います。

お酒は、家のなかにもあるかもしれないし、どこにでも売っているのです。

入院すると、その「離脱症状」にもある程度、対処してもらえると思います。

また、入院していると不思議と「飲酒欲求」が抑えられることが多いといいます。

まず、一旦、体からアルコールを抜いて離脱症状から逃れることが大事だと思います。

離脱症状は、1周間から1か月もすると治まることが多いと聞きます。

しかし、入院して禁酒(あえて断酒とは言いません)をしていると体は元気になっていき、お酒が飲める体になってきたと思ってしまうという盲点があります。

食べ物や水分を摂らなかったり、眠らなかったりすると死んでしまいますが、アルコールを摂らなければ健康になるんです。

また、入院中は飲酒欲求が起こらないことが多いですから、退院してももうお酒を飲まなくても大丈夫と思ってしまうことが多いようです。

でも、退院した日が飲酒する可能性が一番高いと言う人もいます。

アルコール依存症は、「否認の病」とも言われていて、自分がアルコール依存症であることを認めたがらない傾向があるそうです。

そして、その理由の一つには、アルコール依存症の人は、自分が「お酒を飲まない生活を送る」ことを想像できなくなってしまっていることがあるといいます。

まずは、自分がアルコール依存症であることを認めることです。

リカバリーのところでもお話ししたかもしれませんが、自分の抱える病気や障害を認めることが回復への第一歩です。

そのためにも、入院中から自助グループに通うことです。

自助グループに通うことで、自分がアルコール依存症であることを認めやすくなり、「お酒を飲まない生活を送ること」を想像しやすくなり、断酒する決意を固める助けになると思います。

ここで注意しておかないといけないのは、断酒していて再飲酒してしまうことは決して悪いことではないのです。

「再飲酒」してしまうことを「スリップ」すると言います。

アルコール依存症という病気は、お酒を飲んでしまう病気なのです。

アルコール依存症に治癒がない限り、再飲酒をしたからといってその人を責めたり、また、アルコール依存症の当事者の方も自分を責めることが良いとは思いません。

スリップはしない方が良いのですが、スリップしたとしても、もうダメだと思ってあきらめず、また仕切り直して断酒に取り組めば良いのです。

人はなにかをしようとすると、必ずそれと反対の気持ちが起こるそうです。

これを「拮抗(反対に作用すること)」というようです。

ですから、断酒しようとすると、「お酒を飲みたい」という気持ちが必ず起こってくるということになります。

ということは、断酒をする時は、「断酒」を目標にするのではなくて、何か別のことを目標にすると良いと思います。

たとえば、「何か資格を取るために勉強をする(そのためにはお酒は飲めない)」ことを目標にすれば、それと反対の気持ちは、「勉強したくない」ということであって、「お酒を飲みたい」ことにはならないということです。

そうすれば、僧侶が断食の修行をするような苦しみが少しでも軽くなるかもしれませんよね。

 

アルコール依存症には、お酒が強い人がなりやすいと思われがちですが、どうやら、そうではないらしいです。

オーストラリアの原住民族のアボリジニは、もともとお酒をあまり飲めない体質の人がほとんどだったらしいのですが、西洋人が持ち込んだお酒によりアルコール依存症になる人が増加して社会問題になっているそうです。

現在、オーストラリアのアボリジニの居住区には、お酒の持ち込みが禁止になっているらしいです。

日本でも女性は男性よりお酒が弱い人が多いという統計が出ているみたいですが、近年、女性のアルコール依存症が増えているという現状があるみたいですね。

皆さんも気をつけてくだいね。

 

最後に、ある人の断酒会語録を一つ紹介したいと思います。

「私は、断酒して数年になりますが、今でも飲酒していた頃の、周りから言われたりされたりした嫌なことをフラッシュバックのように思い出しては、辛い気持ちになることがあります。あの頃の自分は、前の晩にお酒を飲みすぎて次の日に会社に行けなくなり、言い訳が見つからなくて無断欠勤したり、友だちとの約束をすっぽかしたりして本当にダメな人間だったと思います。お酒を飲んで死ねるんだったらそれで良いと思っていました。それでも、その頃、周りから受けた差別のような仕打ちには許せないものがあります。でも、今でもお酒を飲みたいという気持ちはあるのか、寝てて普通にお酒を飲めるようになっている夢を見たりします。今はやりがいもできて、断酒して本当に良かったと思っています。スリップしないように、ストレスを溜め込んで飲酒欲求が起きないように、仕事では昇進とか出世とか考えないようにしてマイペースで頑張っています。」

このように、アルコール依存症の人は、飲酒していた頃に、意識していたかどうかは別として、辛い思いを抱えながらも「死にたい」とか「酒を飲んで死ねるならそれで良い」とか考えていた人が多いようです。

それが、断酒することで、やりがいを見つけて、無理に昇進や出世はしなくても、その人らしく生きることができるようになることは本当に素晴らしいことだと思います。

 

今回はここまでにします。

まだ書き忘れたこともあると思いますが、また折を見てお話ししたいと思います。

また、よろしくお願いします。

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8月19日はリリたんの誕生日でした。😁ケーキをあげたけど興味なし(¯―¯٥)